OTEMACHI REVIVAL arch-hiroshima 広島の建築
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マンション問題について
現地におけるいわゆる「マンション問題」の火付け役となったのは、三井不動産が元安橋近くに計画したマンション「ファーストレジデンス紙屋町(以下、当該物件と表記)」です。容積率600%といっても、もしオフィスビルだったらせいぜい30m強の高さでしょうからここまで大きな問題にはならなかったと思いますが、マンションだとどうしても高さはアップし、当該物件も40mを超えています。できあがったマンションを見ると、確かに圧迫感はあり、私も好ましくないと思います。

さて、ネット上では景観上の問題が指摘されると共に犯人探しが始まり、不動産業者(以下、デベと表記)にモラルがない、市に平和行政の認識が薄いなど、様々なバッシングが展開されました。デベや行政にも確かに問題はあります。でも、私はそのバッシングは感情論であって問題の本質を突いていないと考えます。

まずは、今回の騒動について、ネット上で拾える情報を整理してみました。

年月日 できごと 情報源
2005/4月 当該物件に関して、建築物等美観形成要綱に基づく協議開始。要綱なので強制力はなく、そもそも「高さ」は協議項目に入っていない。 2006/6/14 付 中国新聞WEB版
2005/5月?6月? 当該物件に関して、美観形成要綱に基づく協議終了。協議済証交付、着工へ。 2006/6/14 付 中国新聞WEB版
2006/2/10 県被団協ほか、市に対し平和公園周辺での「高さ規制」導入、および当該物件に関する働きかけを要請。市側は、「(当該物件の)高さを強制的に低くする手段は現在ない」、将来的な高さ規制については「慎重に議論したい」と回答。 2006/2/11 付 中国新聞WEB版
2006/3月 市長名で、マンションの高さに再考を求める文書を業者に送付 2006/6/14 付 中国新聞WEB版
2006/3/22 市民団体「世界遺産『原爆ドーム』の景観を守る会」、計画変更を働きかけるよう市に要請。市側は、当該物件への行政指導はできないが、景観条例が可決され次第高さ基準などの検討に入ると回答。 2006/3/23 付 中国新聞WEB版
2006/4月頃 (※この問題について全国報道され、完全に火がついた格好となる。)
2006/5/16 日本イコモス委員長、工事中止を働きかけるよう市に要請 2006/5/17 付 中国新聞WEB版
2006/5/30 市民団体「世界遺産『原爆ドーム』の景観を守る会」、一万三千八百九十三人分の反対署名を市に提出 2006/5/31 付 中国新聞WEB版
2006/11/29 市の建築物等美観形成要綱が改正。強制力はないものの、協議項目に「高さ」が加わる。 2006/11/30 付 中国新聞WEB版
2006/11/30 市長記者会見。拘束力を伴う「高さ制限」については合意形成プロセスを踏みつつ進めていくことと、商工会議所については移転の方向で進める意向を表明。 広島市ウェブサイト
2006年11月30日記者会見
2006/12/4 広島市景観審議会初会合。市は景観法に基づく景観形成基本計画に「高さ」を盛り込む方針を示した。 (※つまり強制力のある「高さ規制」をするという意思表示) 2006/12/5 付 中国新聞WEB版
2006/12/21 市の要綱改正に伴う地権者向け説明会。 (※地権者の反応については報道されていない) 2006/12/22 付 中国新聞WEB版


デベに問題が無かったかと言われると、半分YESです。

今回の場合、場所が場所ですから、デベの姿勢はある程度批判されてもしょうがないかなと思います。デベは目の前のマンションを高く売ることに関心の第一があるので、周辺や街全体に悪影響があろうと知ったことではない…のが基本スタンスです。もちろん法規制は遵守しますし、周辺に直接的な損害(例えば「工事中の騒音」や「日影」など)が及ぶ場合はきちんと補償しますが、「景観が悪くなる」「街がさびれる」といった影響範囲が不明確な項目に配慮することは通常ありません。
ただし、デベの行動は法令に違反していないわけですから、仮に反対運動によって三井不動産が撤退したとしても、今度はより悪質な業者が入り込んでくるだけであり、何ら問題の解決にはなりません。


では、行政に問題が無かったかと言われると、これも半分YESです。

行政の役割は、良い街をつくっていくための方針を決めルールを整備して、その枠内で民間事業者が営利活動をするよう誘導していくことにあります。なぜもっと早く「高さ制限」を定めなかったのかという批判は多いようです。しかし、現に土地を持つ(あるいは借りている)人には容積率の範囲で自由に建物を建てる権利が既にあり、そのことを前提に暮らしを成り立たせていることを忘れてはいけません。
例えば、今あなたが2階建ての家を持っているとしましょう。ある日突然役人がやってきて、「この町は高さを下げた方がいいかなと思うんで、今度からは1階建てしか許可しませんからね。」 と言われたらどう反応するでしょうか。 「分かりました。狭くなりますけど、次の建て替えからは1階で我慢します。」という人もいると思いますが、 「役人の気分ひとつで市民の財産権を侵害するな!」 と反論するのが普通の反応ではないでしょうか。

もし仮に、このマンション問題が発生する前に行政が高さ規制をやろうとしたら、圧倒的多数の市民は無関心で、地元の市民(つまり地権者)が反対する声だけが大きくなり、たちまち潰されてしまったはずです。孤立無援で潰されることが明らかな「高さ規制」をあえてやろうという行政マンは普通いません。
行政に問題があったとすれば、「地元の市民の財産権を侵害してでも高さ規制をやろうという強い意志がなかった」 点は指摘できると思いますが、それをやらなかったことが明らかな問題とは言い切れません。


つまり、マンション問題が起きた最大の原因は 「市民一人一人の無関心」 なのです。

この問題が連日テレビに流れたことによって関心が集まりましたので、今なら「高さ制限」を多くの市民が応援してくれますし(でも大多数はまだ無関心だと思いますが)、議会でも「高さ規制」への反対意見は出にくいでしょう。つまり、ある意味、「あのマンションのおかげ」です。
行政はまず迅速に実施できる(ただし強制力はない)要綱改正を行い、市民の反応を見極め、大多数の賛同が集まりそうなら今度は地元市民を説得して強制力のある「高さ規制」を実現させようとしています。2006年11月30日の市長記者会見でもその方針は明確に示されています。
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